稲田禅房21-2「市民大学」講座 のご報告

サマーセミナー1日目(7月16日13:00~16:00)

 「親鸞の伝記の研究 (1)―誕生と出家―」

 今井雅晴先生(筑波大学名誉教授)

サマーセミナー2日目(7月17日09:00~12:30)

 「死者はどこへ行くのか―変容する日本の葬儀と死生観―」

 佐藤弘夫先生(東北大学大学院教授)

公開講座(7月17日13:30~15:30)

 「憲法学講義―憲法の歴史・解釈そして展望へ」

 齋藤和夫先生(駿台予備学校講師・埼玉大学講師)

 

 7月16・17日にサマーセミナーを開催しました。ご講師は昨年同様、今井雅晴先生と佐藤弘夫先生です。

 今夏は始めての試みとして、セミナー終了後に公開講座を開設しました。現在の我が国では、戦前期の日本を肯定しようとする修正主義的な歴史認識が、一部の政治家を中心に拡大しています。さらに、憲法制定過程への疑義や国際緊張の高まりを理由に、憲法学者たちの反対にもかかわらず憲法解釈の変更が行われて、憲法改定も射程に入ってきています。そのような昨今の政治・社会情勢の中で、原点に返って知識を整理してみる必要があると考えたからです。このため、太平洋戦争へ向かった戦前期の日本の近現代史を取り上げた春の公開講座に続いて、夏の公開講座では「憲法とは何か?」をご講義いただくことにしました。

 夏に、しかもセミナー終了後に公開講座を行うのは始めてでしたが、多くの方がご聴講くださり、主催者としてはホッといたしました。多くの方が、憲法について関心を抱いているということだと思います。

 

 まずセミナー1日目は、宗教史からみた親鸞研究の第一人者である今井先生による恒例のご講義です。ここ数年は仏教史という大枠の中で親鸞聖人を捉えるご講義が展開されましたが、今年は親鸞研究の原点に返り、親鸞聖人のご生涯を再び実証的に研究し直そうとう試みをご紹介くださいました。ご講義を受講していて、東西本願寺などが採用する教学と学問的な実証研究の成果とが乖離した場合、宗教界は如何に対処するべきなのか? …コペルニクス(ポーランド/16C)を例に出すまでもなく、学問上の成果には謙虚に向き合うべきだと考えました。

 次にセミナー2日目は、日本思想史がご専門の佐藤先生によるご講義です。中世では死者は瞬時に仏に委ねられた匿名の存在であったが、その後は死者を慰める主体が人間となり死者は墓地に葬られるようになる…と歴史的にご説明が続きます。イエ制度の発達に関連し、死者は「ご先祖様」へと変容するとのことです。
 最後に、桜山神社招魂場(山口県)から東京招魂社を経て靖国神社へと発展した、戦死者を祀る国家管理のの系譜が紹介されました。「ヤスクニを巡る議論は全く噛み合っていない」とのお話でしたが、その点を詳しくお聞きしたいものだと思いました。

 

 セミナーに続いて、昼食後には公開講座が開かれました。

 齋藤先生には、歴史上なぜ憲法が成立し、どのように発展してきたのか? 日本国憲法には何が書かれているか? その憲法が成立した経緯は? などについて、法律の素人にも解り易くお話いただきました。立憲主義や「法の支配」についても、理解できました。これらを踏まえた上で初めて、問題となっている日本国憲法改定の是非や改定点を冷静に判断することができると考えるのですが、押しつけ憲法論を嚆矢とする改憲論や我が国の安全保障と憲法との関係について、もう少し突っ込んだ議論をお聞きしたいものだと考えました。

 実は、ご担当の齋藤先生は管理人の大学院時代の先輩で、一緒にドイツ語の勉強をさせていただきました。すでに40年近くお付き合いさせていただいています。このため、質疑応答の際には管理人は司会者の権限を逸脱して、かなり我が儘な質問を繰り返させていただきました。この場を借りて、お詫び申し上げます。

 

 

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以下に、サマーセミナー・公開講座の御案内を再掲しておきます。


■サマーセミナー 申込要・有料(下記参照)

7月16日(土)  12:50開講式、1300~16:00講義(予定)

   今井雅晴先生(筑波大学名誉教授) 

    「親鸞の伝記の研究 (1)――誕生と出家――」

7月17日(日) 09:00~12:30講義&対談、12:30閉講式(予定)

   佐藤弘夫先生(東北大学大学院教授)

  「死者はどこへ行くのか――変容する日本の葬儀と死生観――」

 

《今井雅晴先生のプロフィール】

(1)略歴 

1942(昭和17)年、東京都に生まれる。東京教育大学大学院博士課程修了。文学博士。茨城大学教授、プリンストン大学・コロンビア大学客員教授、筑波大学教授などを経て現在は筑波大学名誉教授、真宗文化センター所長。専門は日本中世史、仏教史。

 

(2)主要著書

『親鸞と東国門徒』・『親鸞と浄土真宗』・『親鸞と東国』(吉川弘文館)、『親鸞と本願寺一族』(雄山閣出版)、『わが心の歎異抄』(東本願寺出版部)、『親鸞の伝承と史実』・『親鸞の家族と門弟』・『恵信尼――親鸞とともに歩いた六十年――』(法蔵館)、『茨城と親鸞』(茨城新聞社)、『親鸞をめぐる人々』・『下野と親鸞』・『親鸞とその家族』・『親鸞と恵信尼』・『親鸞と如信』・『親鸞と東国の人々』『恵信尼さまってどんな方?』・『二十九歳の親鸞聖人』・『親鸞聖人と稲田草庵』・『関白九条兼実をめぐる女性たち』・『親鸞をめぐる人びと』(自照社出版)ほか。

 

《佐藤弘夫先生のプロフィール》

(1)略歴 

1953(昭和28)年、宮城県に生まれる。東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了。博士(文学)。盛岡大学文学部助教授、東北大学文学部助教授を経て、現在は東北大学大学院文学研究科教授。専門は日本思想史。

 

(2)主要著書

『鎌倉仏教』(ちくま学芸文庫)、『ヒトガミ信仰の系譜』・『死者のゆくえ』(岩田書院) 、『日本列島の死生観』(韓国語、図書出版ムン)、『日本中世の国家と仏教』・『霊場の思想』(吉川弘文館)、『立正安国論 全訳注』(講談社学術文庫)、『神国日本』(ちくま新書)、『偽書の精神史』・『起請文の精神史』(講談社選書メチエ)、『概説日本思想史』・『日蓮』(ミネルヴァ書房)、『アマテラスの変貌』・『神・仏・王権の中世』(法藏館)ほか。

 

 

■公開講座(夏)   申込不要・無料

7月17日(日) 13:30~15:30講義

 斎藤和夫先生(埼玉大学・武蔵野美術大学・駿台予備学校ほか講師

  「憲法学講義――憲法の歴史・解釈そして展望へ――」

 

 歴史上なぜ憲法が成立し、どのように発展してきたのか? そのような憲法における「法の精神」とは、いったい何なのか? また世界各国の憲法と比較した上で、日本国憲法の特色と問題点はどこにあるのか? そもそも日本国憲法が成立した経緯は? 
 これらを踏まえた上で初めて、問題となっている日本国憲法改定の是非、「どこを改定しどこを改定するべきではないのか」を、冷静に判断することが可能になります。さらに言えば、激動する東アジアの国際情勢の中で日本国憲法が担ってきた役割を検証することは、我が国が向かう将来を選び取ることにも繋がります。
 以上のような問題意識をもち、憲法学がご専門で法学教育や政治経済のご教育経験が豊富な斎藤先生にご講義をお願いしました(主催者)

    

《斎藤先生のプロフィール》

■略歴
1952年、千葉県市原市に生まれる。早稲田大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士前期課程修了、明治大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。埼玉大学をはじめ、東京薬科大学・武蔵野美術大学・明星大学にて法学・憲法担当講師を務める。市原市立公民館公開講座「くらしの中の憲法」も担当。ほかに駿台予備学校講師(政治・経済)。市原市在住。
■著書および活動
『現代憲法』(共著、八千代出版)。「憲法の改正と保障」(吉田善明編著『法学・憲法』所収)、「アメリカにおけるプライヴァシーの権利」(憲法理論研究会ニュース88年4月号所収)。現在は地元神社で保管されてきた「山本五十六の書を刻む木製プロペラの謎」を追求中。

 

 

現在の開門時間は、

9:00~16:00です。

 

親鸞聖人御誕生850年および立教開宗800年を記念した前進座特別公演「花こぶし」の水戸公演が2月に行われます。

詳細は左端の「お知らせ」タブより「行事日程と工事予定」をご覧ください。

(2024.1.11)

⇒ご鑑賞、御礼申し上げます。

 

「除夜の鐘」をつきます。23:50~01:00頃。ご参拝ください。   (2023.12.31)

⇒ご参加・ご参拝ありがとうご

 ざいました。(2023.01.1)

 

2023年度の新米が入荷しました。今年の新米も昨年同様ローズドール賞(最優秀賞)を受賞した新品種「ゆうだい21」です。詳細は左端のタブ「庵田米の販売について」をご覧ください。    (2023.10.20)

 

筑波大学名誉教授(日本思想)伊藤益先生のご講義【第5回】     

「慈悲の思想」をUPしました。左端のタブ「internet市民大学」よりお入りください。      

         (2023.7.15)

 

「市民大学講座」7月16日開催します。ご講師は伊藤益先生です。詳細は左端のタブ「公開講座・Seminar のご案内」をご覧ください。4年ぶりの開催ですので、ご参加をお待ちしています。(2023.5.29)

⇒約70名の受講者の方のご参加を得て、質疑応答で40分の延長の後、無事に終了しました。35度にもなる酷暑の中、駅から往復3km を歩いて参加され方々もありました。皆様、ご参加ありがとうございました。そし て、お疲れさまでした。 

       (2023.7.18)        

 机に向かい静かに目を閉じると、想いは6年前に訪れたキエフ〔キーウ〕に飛ぶ。ホーチミン経由のベトナム航空でモスクワに着いた私は、その足で駅に向かい、翌日の夜行列車を予約したのだった。

 

 首都キエフは、ロシア正教会(今はウクライナ正教会)の建物が夕日に輝く美しい都市だった。十字架を抱えたキエフ大公ウラディミル1世がドニエプル川を見下ろし、独立広場にはウクライナ国旗とEU旗が記念塔を取り囲んでいた(大学の授業で配信した動画の一部をUPします)。

 

  モスクワからキエフまでは夜行で一晩、1時間ごとに寝台列車が出ている。乗車当日その場でキップも買える。「母がウクライナの出身なんだ」と話していた初老のロシア人男性。両国に親戚がいる人々も多い。その国に攻め込むとは…刻々と届く映像を見ていて涙が止まらない。


 事態を予想しなかったと話す識者も多い。フィンランド侵攻(1939)・ハンガリー事件(56)・チェコスロヴァキア事件(68)と繰り返された暴力。必ずキエフまで侵攻すると私は確信していた。なぜ事前に米軍やNATO軍を緊急展開させなかったのか。抑止力となったはずだ。腰の引けた指導者たちの宥和政策が、ヒトラーの勢力拡大を可能にしたことを思い出す。


 キエフではミンスク(ベラルーシの首都)行きの寝台列車の切符が買える。チェルノブイリの側を抜けた列車は、翌朝にはミンスクに着いた。そのベラルーシでは、一昨年にはルカシェンコ政権に対する激しい民主化要求デモが続いた。ロシアでも反戦デモが続いているようだ。ナショナリズムに染まらないロシア人の知性に、僅かな光明を見る思いがする。

      (2022.2.26)

《追伸》
  十数年前のロシア航空、隣に座ったチェコ人青年の言葉が思い出される。チェコ解体(1939)と「プラハの春」弾圧(68)を経験した彼らの言葉は重い。 
  Russia is more dangerous

  than Germany.


 自国の権益と安全保障を要求して一方的に他国に攻め込む姿勢は、満蒙特殊権益を死守しようとした80年前の日本と重なる。欧米諸国による圧迫やウクライナの性急な親欧姿勢が攻撃を誘発したとする言説も聞かれるが、それは米国による包囲網が日本を追い込み開戦に至らしめたとして、日本の侵略行為を矮小化しようとするのと同じである。        (2022.5.5)

 

 

 

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