緊急講演「アラブ・イスラム世界の現状と展望」(稲田禅房「市民大学」公開講座)

スプリングセミナー「イスラムの信仰と親鸞の信仰」(稲田禅房20-1「市民大学」講座)


3月8日に行われました2つのイスラム講演会は、大盛況でした。朝日新聞でも紹介されましたし、NKHニュースでも放映されました。以下は、そのご報告です。

 

 イスラム世界における政治の動きが、今年に入り急に日本人にも身近なものになってきました。よって、昨年より決まっていた今春のスプリングセミナー『イスラム教の信仰と親鸞の信仰』(加藤智見先生)に加えて、『アラブ・イスラム世界の現状と展望』(岡田總先生)と題した緊急講演(稲田禅房「市民大学」公開講座)を、セミナー当日の3月8日に無料で開催することにしました。岡田先生は小美玉市のご出身で、アラブ世界に約10年ご滞在後は在日レバノン大使館でご活躍された方です。当山で政治問題を正面から取り上げるのは、今回が初めてです。

パワーポイントでご説明の岡田先生
パワーポイントでご説明の岡田先生

  当日は激しい雨にもかかわらず、緊急講演(12:00~13:15)には会場一杯の 100名を越える受講者が集まり、改めてイスラム世界に対する関心の高さが示される結果となりました。プロジェクターを駆使されつつ、1時間に及ぶ岡田先生のご講演は進みました。

 アラブ人の意識の根底にキリスト教諸国による「十字軍への恨み」があり、欧米の価値観の押し付けは民衆の反欧米感情を刺激するだけだとのご指摘、さらに「テロとの戦い」というフレーズで思考停止に陥ってはならないとのご意見は、アラブ諸国と欧米諸国や日本とでは命の重みが全く異なるという現実とともに、肝に銘じておくべきでしょう。マスコミや欧米諸国経由の情報に頼らず、自らの視点でしっかりとアラブ世界の現実を直視することが大切だとして、アラブの格言「大切なことは自分の手で決める」をご紹介くださいました。武装蜂起してキューバ革命を成功させたカストロやゲバラ、さらにアパルトヘイトに抵抗して約30年も収監されたマンデラも、体制側からはテロリストだとして弾圧されていたことが、思い出されます。時間の関係で、質疑応答の際に議論が盛り上がる時間が十分に取れなかったことが残念です。

満員だった緊急講演/右端はNHKの記者
満員だった緊急講演/右端はNHKの記者

 続いて10分遅れで始まった恒例のスプリングセミナー(13:40~16:50)には、有料にもかかわらず約70名の方がご参加になり、加藤先生のユーモア溢れるご講義が展開されました。日本と対比しつつ、西アジアの厳しい自然環境や国境を接して侵略が繰り返される政治状況が、一神教のヤハヴェやアラーという厳しい神を生んだことをご説明くださいました。つまり、自然環境や社会状況が人間の思想に大きな影響を及ぼしている訳です。さらに、一神教の神は人間の叡智の及ばない人間を超越した形而上学的な存在であり、そのような存在から預言者ムハンマドは啓示(神の言葉)を受けたとのご指摘がありました。これに比べて、仏教では「一切衆生悉有仏性/草木国土悉皆成仏」(万物には仏性があり皆が仏になることができる)と考える点に特色があり、仏教の真理はガウダマ=シッダールタという一人の人間が自ら思索したものであるとのお話でした。この点が、欧米社会で「仏教は宗教ではなくて哲学だ」と言われる所以なのでしょう。

 しみじみと考えさせられるようなお話の中で、時間は瞬く間に過ぎ去りました。美味しいお饅頭を大量に差し入れてくださいました飯村茂夫さま、ありがとうございました。緊急講演・セミナーと連続してお腹が空いた受講者の方々に、大好評でした。「イスラム国と一般のイスラム教徒を同一視しないで欲しい」との友人からのメッセージが受講者から紹介されたこと、「混迷する世界情勢の中で平和を維持していって欲しい」との思いを高齢の住職が強く訴えたことを、お伝えしておきます。 

新設された大型黒板を使って行われたスプリングセミナー
新設された大型黒板を使って行われたスプリングセミナー

 

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以下に緊急講演・スプリングセミナーの御案内を再掲しておきます。

 

 

緊急講演(稲田禅房「市民大学」無料公開講座)

 

「アラブ・イスラム世界の現状と展望」

 

  3月8日(日)12:00~13:15 申し込み不要・無料

 

  岡田總先生(アラブ世界ジャーナリスト・小説家)

 

2003年のイラク戦争後の東アラブ地域(イラク・シリア・レバノン・ヨルダン・パレスチナ)を中心としたアラブ世界を俯瞰し、問題になっている「イスラム国」「アルカイダ」などの同地域での過激派の動きに焦点を当てる。さらに、そうした過激思想の影響を受けた者によって引き起こされた、フランスでの風刺画専門誌シャルリー・エブド社襲撃事件が浮き彫りにした宗教上の信仰対象への侮辱の問題表現の自由の問題、さらには文明間の対立の問題なども併せ考察する。

 

★緊急講演の終了後、続いてSpring Seminar「イスラム教の信仰と親鸞の信仰」      (加藤智見先生)が始まります(申し込み必要・有料)。併せて、ご参加ください。

  

 

【岡田 總あつむ先生のご紹介】

■略歴

1945(昭和20)年、茨城県に生まれる。大阪外国語大学アラビア語学科卒業。約10年間のイラク、リビア、オマーンでの現地体験の後、在日レバノン大使館に勤務。2011年に定年退職後は、翻訳・著述活動(ペンネーム:上村茂)を続け、現在に至る。小美玉市在住。

 

主要著書

小説『フッリーヤ二区』(栄光出版社)・『アッラーの大地にて』(eブックランド)・『ラーフィデインの谷』(藍ユーフラテス出版)、エッセイ『バグダード今昔物語』(藍ユーフラテス出版)ほか。

 

 

スプリングセミナー(稲田禅房「市民大学」講座)

 

 3月8日(日) 13:40~16:40

 

 加藤智見先生(東京工芸大学名誉教授)

  「イスラム教の信仰と親鸞の信仰」

 

★開講前に緊急講演「アラブ・イスラム世界の現状と展望」(岡田總先生)を開催します。

 併せて、ご参加ください(12:00~13:15、無料) 

  

●開会式などを除き3時間、定員70名です。

●受講料は1日のみ3000円、サマーセミナーと併せ2日で5500円、3日で7500円です。

スプリングセミナーに参加されて3000円をお支払いいただいた方は、サマーセミナーご参加の際には差額のみお支払いください。具体的に言えば、①7月18日または19日のどちらかのみの受講の場合は5500円-3000円=2500円、②7月18日と19日の両日とも受講の場合は7500円-3000円=4500円を、お支払いください。

●3日前までにお申し込み下さい。

●前後に宿坊にお泊まり頂くことも可能です(特別料金2食付7000円/ご予約ください)

●ご昼食用のお弁当もあります(700円/ご予約ください)

 

 

【加藤智見先生のご紹介】

■略歴 

1943(昭和18)年、愛知県に生まれる。早稲田大学第一文学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程修了。東京大学および早稲田大学講師、東京工芸大学教授などを経て、現在は東京工芸大学名誉教授・同朋大学講師、光専寺(浄土真宗大谷派)住職。専門は宗教学、仏教学。

 

■主要著書

 『親鸞とルター』(早稲田大学出版部)、『ココロの旅からタマシイの旅へ――宗教の理解』・『宗教のススメ――やさしい宗教学入門』・『蓮如入門』・『誰でもわかる浄土三部経』・『世界の宗教と信仰』・『親鸞の浄土を生きる』・『本当の宗教とは何か――宗教を正しく信じる方法――』(大法輪閣)、『いかにして〈信〉を得るか――内村鑑三と清沢満之――』・『蓮如とルター』・『仏像の美と聖なるもの』・『浄土三部経のこころ』(法蔵館)、『他力信仰の本質――親鸞・蓮如・満之』(国書刊行会)、『世界の宗教が面白いほどわかる本』(中経出版)、『見つめ直す日本人の宗教心』(原書房)、『図説あらすじでわかる!親鸞の教え』・『図説あらすじでわかる!歎異抄』・『図説浄土真宗の教えがわかる! 親鸞と教行信証』(青春出版社)ほか。

 

 

 

 

 

現在の開門時間は、

9:00~16:00です。

 

親鸞聖人御誕生850年および立教開宗800年を記念した前進座特別公演「花こぶし」の水戸公演が2月に行われます。

詳細は左端の「お知らせ」タブより「行事日程と工事予定」をご覧ください。

(2024.1.11)

⇒ご鑑賞、御礼申し上げます。

 

「除夜の鐘」をつきます。23:50~01:00頃。ご参拝ください。   (2023.12.31)

⇒ご参加・ご参拝ありがとうご

 ざいました。(2023.01.1)

 

2023年度の新米が入荷しました。今年の新米も昨年同様ローズドール賞(最優秀賞)を受賞した新品種「ゆうだい21」です。詳細は左端のタブ「庵田米の販売について」をご覧ください。    (2023.10.20)

 

筑波大学名誉教授(日本思想)伊藤益先生のご講義【第5回】     

「慈悲の思想」をUPしました。左端のタブ「internet市民大学」よりお入りください。      

         (2023.7.15)

 

「市民大学講座」7月16日開催します。ご講師は伊藤益先生です。詳細は左端のタブ「公開講座・Seminar のご案内」をご覧ください。4年ぶりの開催ですので、ご参加をお待ちしています。(2023.5.29)

⇒約70名の受講者の方のご参加を得て、質疑応答で40分の延長の後、無事に終了しました。35度にもなる酷暑の中、駅から往復3km を歩いて参加され方々もありました。皆様、ご参加ありがとうございました。そし て、お疲れさまでした。 

       (2023.7.18)        

 机に向かい静かに目を閉じると、想いは6年前に訪れたキエフ〔キーウ〕に飛ぶ。ホーチミン経由のベトナム航空でモスクワに着いた私は、その足で駅に向かい、翌日の夜行列車を予約したのだった。

 

 首都キエフは、ロシア正教会(今はウクライナ正教会)の建物が夕日に輝く美しい都市だった。十字架を抱えたキエフ大公ウラディミル1世がドニエプル川を見下ろし、独立広場にはウクライナ国旗とEU旗が記念塔を取り囲んでいた(大学の授業で配信した動画の一部をUPします)。

 

  モスクワからキエフまでは夜行で一晩、1時間ごとに寝台列車が出ている。乗車当日その場でキップも買える。「母がウクライナの出身なんだ」と話していた初老のロシア人男性。両国に親戚がいる人々も多い。その国に攻め込むとは…刻々と届く映像を見ていて涙が止まらない。


 事態を予想しなかったと話す識者も多い。フィンランド侵攻(1939)・ハンガリー事件(56)・チェコスロヴァキア事件(68)と繰り返された暴力。必ずキエフまで侵攻すると私は確信していた。なぜ事前に米軍やNATO軍を緊急展開させなかったのか。抑止力となったはずだ。腰の引けた指導者たちの宥和政策が、ヒトラーの勢力拡大を可能にしたことを思い出す。


 キエフではミンスク(ベラルーシの首都)行きの寝台列車の切符が買える。チェルノブイリの側を抜けた列車は、翌朝にはミンスクに着いた。そのベラルーシでは、一昨年にはルカシェンコ政権に対する激しい民主化要求デモが続いた。ロシアでも反戦デモが続いているようだ。ナショナリズムに染まらないロシア人の知性に、僅かな光明を見る思いがする。

      (2022.2.26)

《追伸》
  十数年前のロシア航空、隣に座ったチェコ人青年の言葉が思い出される。チェコ解体(1939)と「プラハの春」弾圧(68)を経験した彼らの言葉は重い。 
  Russia is more dangerous

  than Germany.


 自国の権益と安全保障を要求して一方的に他国に攻め込む姿勢は、満蒙特殊権益を死守しようとした80年前の日本と重なる。欧米諸国による圧迫やウクライナの性急な親欧姿勢が攻撃を誘発したとする言説も聞かれるが、それは米国による包囲網が日本を追い込み開戦に至らしめたとして、日本の侵略行為を矮小化しようとするのと同じである。        (2022.5.5)

 

 

 

書籍の販売コーナー宿坊にございます。左端のおしらせ→書籍販売コーナー新設のご案内とお進みください(写真がご覧になれます)。また、当山のパンフレットオリジナル絵葉書その他の記念品があります。宿坊の売店にてお求めください。パンフレットと絵葉書は、ご本堂内にもございます。