サマーセミナー(稲田禅房20-2「市民大学」講座)のご報告


 7月18日・19日に今井雅晴筑波大学名誉教授および佐藤弘夫東北大学大学院教授をお招きして、恒例のサマーセミナーが開催されました。今年のテーマは、『親鸞聖人と極楽浄土』(今井先生)・『幽霊の発生―怪談から見直す鎌倉仏教と日本文化―』(佐藤先生)です。

 今井先生は、まず仏教伝来以前の日本における他界観について、高天原という観念や古墳や奥津城(神道におけるお墓)を例に挙げて、ご説明くださいました。続いて、仏教伝来以降は補陀落浄土という他界観が出てきたこと、さらに貴族の支配体制が動揺して武士が抗争を繰り返していく中で、「末世」と「末法」が同一視されるようになったとお話が続きます。源信『往生要集』における地獄と極楽に言及された後、最後は親鸞『浄土和讃』『正像末浄土和讃』の内容をご紹介くださいました。ご研究やご講義で滞在されたウズベキスタンやエジプトの写真上映を挟みながら、時折お話が脱線する(その部分こそが興味深いのですが)楽しいご講義でした。

 佐藤先生のご講義は、「なぜ社会の世俗化が進む近世に怪談が興隆するのか?(幽霊が大量発生するのか?)」という問題意識が出発点でした。中世には死者は匿名の存在であり、一部の支配層の場合を除き死者を「ケアするイエ」が未成立であった。このため、死後は仏に委ねられ死者は瞬時に救済される、言い換えれば死者は「この世」にいない。これに対して近世になると、死者は「この世」に留まると考えられ、死者の本籍として墓標や墓石が建てられるようになる。そして、「イエ」の確立に伴い墓に憩うホトケは先祖へと変化し、供養の対象となっていく。イエの格式に従って執り行う供養は死者と生者との契約とされ、契約不履行の場合には死者が幽霊となって生者に復讐することになる。言い換えれば、近世は「死者が記憶されることを要求する時代」であり、このような文脈の中で靖国神社も捉える必要がある。すなわち、天皇のために死んだ者を「身分を超えて神への上昇を保証」し永遠の記憶に留めることにより、「被支配階層の閉塞感」が解放されて国民国家の形成に寄与していく。以上のようなお話でした。難しい内容のお話ですが、それが極めてわかりやすい語り口で説明されていきます。スクリーンに次々に映しだされる幽霊の数々…(画面上だからこそ)興味津々で思わず引き込まれました。

「ご対談」中の今井先生と佐藤先生
「ご対談」中の今井先生と佐藤先生

 なお来年のサマーセミナー(2016年7月16・17日)も、今井先生・佐藤先生のお二人がご担当くださることになっています。








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以下にサマーセミナーの御案内を再掲しておきます。

 

7月18日(土)  12:45開講式、1300~16:00講義(予定)

   今井雅晴先生(筑波大学名誉教授)

    「親鸞聖人と極楽浄土」

7月19日(日) 09:00~12:30講義&対談、12:30閉講式(予定)

   佐藤弘夫先生(東北大学大学院教授)

    「幽霊の発生――怪談から見直す鎌倉仏教と日本文化――」

   閉会後に境内案内tourなどを行いますので、どうぞご参加ください。


●各回とも開会式などを除き3時間、定員70名です。

●受講料は1日のみ3000円、2日で5500円、3日で7500円です。

スプリングセミナーに参加されて3000円をお支払いいただいた方は、サマーセミナーご参加の際には差額のみお支払いください。具体的に言えば、①7月18日または19日のどちらかのみの受講の場合は5500円-3000円=2500円、②7月18日と19日の両日とも受講の場合は7500円-3000円=4500円を、お支払いください。

●3日前までにお申し込み下さい。

●前後に宿坊にお泊まり頂くことも可能です(特別料金2食付7200円/ご予約ください)

●ご昼食用のお弁当もあります(720円/ご予約ください)



■ご講師紹介

【加藤智見先生】

(1)略歴 

1943(昭和18)年、愛知県に生まれる。早稲田大学第一文学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程修了。東京大学および早稲田大学講師、東京工芸大学教授などを経て、現在は東京工芸大学名誉教授・同朋大学講師、光専寺(浄土真宗大谷派)住職。専門は宗教学、仏教学。


(2)主要著書

 『親鸞とルター』(早稲田大学出版部)、『ココロの旅からタマシイの旅へ――宗教の理解』・『宗教のススメ――やさしい宗教学入門』・『蓮如入門』・『誰でもわかる浄土三部経』・『世界の宗教と信仰』・『親鸞の浄土を生きる』・『本当の宗教とは何か――宗教を正しく信じる方法――』(大法輪閣)、『いかにして〈信〉を得るか――内村鑑三と清沢満之――』・『蓮如とルター』・『仏像の美と聖なるもの』・『浄土三部経のこころ』(法蔵館)、『他力信仰の本質――親鸞・蓮如・満之』(国書刊行会)、『世界の宗教が面白いほどわかる本』(中経出版)、『見つめ直す日本人の宗教心』(原書房)、『図説あらすじでわかる!親鸞の教え』・『図説あらすじでわかる!歎異抄』・『図説浄土真宗の教えがわかる! 親鸞と教行信証』(青春出版社)ほか。


【今井雅晴先生】

(1)略歴 

1942(昭和17)年、東京都に生まれる。東京教育大学大学院博士課程修了。文学博士。茨城大学教授、プリンストン大学・コロンビア大学客員教授、筑波大学教授などを経て現在は筑波大学名誉教授、真宗文化センター所長。専門は日本中世史、仏教史。


(2)主要著書

『親鸞と東国門徒』・『親鸞と浄土真宗』・『親鸞と東国』(吉川弘文館)、『親鸞と本願寺一族』(雄山閣出版)、『わが心の歎異抄』(東本願寺出版部)、『親鸞の伝承と史実』・『親鸞の家族と門弟』・『恵信尼――親鸞とともに歩いた六十年――』(法蔵館)、『茨城と親鸞』(茨城新聞社)、『親鸞をめぐる人々』・『下野と親鸞』・『親鸞とその家族』・『親鸞と恵信尼』・『親鸞と如信』・『親鸞と東国の人々』『恵信尼さまってどんな方?』・『二十九歳の親鸞聖人』・『親鸞聖人と稲田草庵』・『関白九条兼実をめぐる女性たち』・『親鸞をめぐる人びと』(自照社出版)ほか。

 

【佐藤弘夫先生】

(1)略歴 

1953(昭和28)年、宮城県に生まれる。東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了。博士(文学)。盛岡大学文学部助教授、東北大学文学部助教授を経て、現在は東北大学大学院文学研究科教授。専門は日本思想史。


(2)主要著書

『鎌倉仏教』(ちくま学芸文庫)、『ヒトガミ信仰の系譜』・『死者のゆくえ』(岩田書院) 、『日本列島の死生観』(韓国語、図書出版ムン)、『日本中世の国家と仏教』・『霊場の思想』(吉川弘文館)、『立正安国論 全訳注』(講談社学術文庫)、『神国日本』(ちくま新書)、『偽書の精神史』・『起請文の精神史』(講談社選書メチエ)、『概説日本思想史』・『日蓮』(ミネルヴァ書房)、『アマテラスの変貌』・『神・仏・王権の中世』(法藏館)ほか。 

現在の開門時間は、

9:00~16:00です。

 

親鸞聖人御誕生850年および立教開宗800年を記念した前進座特別公演「花こぶし」の水戸公演が2月に行われます。

詳細は左端の「お知らせ」タブより「行事日程と工事予定」をご覧ください。

(2024.1.11)

⇒ご鑑賞、御礼申し上げます。

 

「除夜の鐘」をつきます。23:50~01:00頃。ご参拝ください。   (2023.12.31)

⇒ご参加・ご参拝ありがとうご

 ざいました。(2023.01.1)

 

2023年度の新米が入荷しました。今年の新米も昨年同様ローズドール賞(最優秀賞)を受賞した新品種「ゆうだい21」です。詳細は左端のタブ「庵田米の販売について」をご覧ください。    (2023.10.20)

 

筑波大学名誉教授(日本思想)伊藤益先生のご講義【第5回】     

「慈悲の思想」をUPしました。左端のタブ「internet市民大学」よりお入りください。      

         (2023.7.15)

 

「市民大学講座」7月16日開催します。ご講師は伊藤益先生です。詳細は左端のタブ「公開講座・Seminar のご案内」をご覧ください。4年ぶりの開催ですので、ご参加をお待ちしています。(2023.5.29)

⇒約70名の受講者の方のご参加を得て、質疑応答で40分の延長の後、無事に終了しました。35度にもなる酷暑の中、駅から往復3km を歩いて参加され方々もありました。皆様、ご参加ありがとうございました。そし て、お疲れさまでした。 

       (2023.7.18)        

 机に向かい静かに目を閉じると、想いは6年前に訪れたキエフ〔キーウ〕に飛ぶ。ホーチミン経由のベトナム航空でモスクワに着いた私は、その足で駅に向かい、翌日の夜行列車を予約したのだった。

 

 首都キエフは、ロシア正教会(今はウクライナ正教会)の建物が夕日に輝く美しい都市だった。十字架を抱えたキエフ大公ウラディミル1世がドニエプル川を見下ろし、独立広場にはウクライナ国旗とEU旗が記念塔を取り囲んでいた(大学の授業で配信した動画の一部をUPします)。

 

  モスクワからキエフまでは夜行で一晩、1時間ごとに寝台列車が出ている。乗車当日その場でキップも買える。「母がウクライナの出身なんだ」と話していた初老のロシア人男性。両国に親戚がいる人々も多い。その国に攻め込むとは…刻々と届く映像を見ていて涙が止まらない。


 事態を予想しなかったと話す識者も多い。フィンランド侵攻(1939)・ハンガリー事件(56)・チェコスロヴァキア事件(68)と繰り返された暴力。必ずキエフまで侵攻すると私は確信していた。なぜ事前に米軍やNATO軍を緊急展開させなかったのか。抑止力となったはずだ。腰の引けた指導者たちの宥和政策が、ヒトラーの勢力拡大を可能にしたことを思い出す。


 キエフではミンスク(ベラルーシの首都)行きの寝台列車の切符が買える。チェルノブイリの側を抜けた列車は、翌朝にはミンスクに着いた。そのベラルーシでは、一昨年にはルカシェンコ政権に対する激しい民主化要求デモが続いた。ロシアでも反戦デモが続いているようだ。ナショナリズムに染まらないロシア人の知性に、僅かな光明を見る思いがする。

      (2022.2.26)

《追伸》
  十数年前のロシア航空、隣に座ったチェコ人青年の言葉が思い出される。チェコ解体(1939)と「プラハの春」弾圧(68)を経験した彼らの言葉は重い。 
  Russia is more dangerous

  than Germany.


 自国の権益と安全保障を要求して一方的に他国に攻め込む姿勢は、満蒙特殊権益を死守しようとした80年前の日本と重なる。欧米諸国による圧迫やウクライナの性急な親欧姿勢が攻撃を誘発したとする言説も聞かれるが、それは米国による包囲網が日本を追い込み開戦に至らしめたとして、日本の侵略行為を矮小化しようとするのと同じである。        (2022.5.5)

 

 

 

書籍の販売コーナー宿坊にございます。左端のおしらせ→書籍販売コーナー新設のご案内とお進みください(写真がご覧になれます)。また、当山のパンフレットオリジナル絵葉書その他の記念品があります。宿坊の売店にてお求めください。パンフレットと絵葉書は、ご本堂内にもございます。